2011年7月26日火曜日

映画「玄牝ーげんぴんー」


もうロードショーも終わっていて、自主上映会でしかやっていないのですが、ようやく観に行ってきました。河瀬直美監督の映画「玄牝ーげんぴんー」。
河瀬直美といえば、「萌えの朱雀」で衝撃のデビューを果たし、今ではカンヌで賞を受賞しているベテラン監督です。
ほぼ同世代である河瀬直美監督が、お産を題材にした映画を撮ったというこで、ずっと気になっていた一本でした。今回は、カタログハウスさんの主催で上映会&河瀬直美監督講演会のセットのイベントでした。さすがテーマがお産というだけあって、上映会会場には授乳室が儲けられ、赤ちゃんや小さい子ども連れ、そして妊婦さんや若いご夫婦の姿が目立ちました。

この映画は愛知県岡崎市にある「吉村医院・お産の家」を舞台に、そこに集る妊婦さんたちの様子を捉えたドキュメンタリー映画です。
吉村医院は江戸時代の茅葺き屋根の民家を移築し、そこで妊婦さんたち自ら薪割りをして、おくどさん(竃)でご飯を炊き、雑巾掛けや箒で掃除する等、昔ながらの生活を送っています。この吉村医院は、自然出産を推奨する産院として、その世界ではある意味有名な病院で、院長を務める吉村正先生はいつも賛否両論の意見にさらされてる人です。なぜなら、吉村先生は近代医学を真っ向から否定し、どこまでも我が道を突き進んでいる人だからです。



私が吉村医院と吉村先生の存在を知ったのは十数年前でした。ちょうど、そろそろ子どもが欲しいなぁ〜と思い始めた頃に、マクロビオティックに凝っている友人に「こんな人いるよ〜」と教えてもらったのが最初でした。

その頃は自然分娩なんて言葉も知らず、お産というのは当然病院でするものだと思っていました。が、今の時代にも病院ではなく、産婆さんに赤ちゃんを取り上げてもらったり、夫婦だけで出産をしたりする人たちがいると知って、とても衝撃を受けました。そんな原始的なことを選択する人たちが今の時代にもいるんだ!というのが正直な感想でした。

しかしその当時の私は、子どもが欲しいと思いながらも子宮内膜症の激痛に毎月苦しみ、とてもじゃないけど妊娠出産に臨める体ではないということは分かっていました。だから余計に、医療の介入無しに昔ながらの方法でお産をしてしまえる人たちがいるのだとしたら、どうしたらそうできるのか、とても興味を持ちました。そこから、本を読んだり、いろんな経験者に会いに行ったりして、自然分娩について色々と知る事ができました。
そしてそれと同時に、病院出産でつらい扱いを受け、その後の育児生活にまで悪影響を残してしまった人たちの体験もたくさん見聞きしました。
そういった先輩たちの体験を色々見聞きするうちに、お産というのは妊婦自らが元気な子どもを生むぞ!という自覚をしっかり持ち、母子の健康は自分で責任をもって管理するという姿勢がいかに大切なことかということを知りました。
実は,それまでの私は妊婦というのはのんびり生活していて、どこかでお産は病院が生ませてくれるものだと思っていたのです。しかし、お産というものはそんなに甘くないんですね。それは後々自分が妊娠出産を経験してみて思い知りました。

実際に私が妊娠したときは、病院で産むという選択はしたくありませんでした。そこで近所で助産院を探したのですが、見つかった近所の産婆さんは高齢のために廃業していて、代わりに自宅出産を介助してくれる助産士さんのグループを教えてもらいました。というわけで、私の場合は縁あって3人の産婆さんに助けられながら、自宅で出産することができました。
その三人の産婆さんたちに最初に言われた言葉を今でもよく覚えています。

「私たちは助産士という立場上、医師ではないので正常分娩しか取り扱えません。なので、できるだけ正常分娩ができるように日頃からの生活の仕方や食事の仕方、運動等、うるさく言うことになると思います。そして、妊婦さんご自身が自分で責任を持って生活を正すという意識を持ってもらいたいと思います。また、そういう方のお産しか私たちは関わりません。」という、厳しいものでした。 しかしその三人のおかげで、私は今までいかに無自覚に食べ、自然のリズムを無視して体を酷使してきたか、ということに気づく事ができました。この妊婦生活をきっかけに、私の暮らし方や食べ方が随分変化しました。よく寝て、きちんと食べて、しっかり動く。こんな当たり前のことができていなかったんですね。お母さん自身がこんな当たり前のことができていなくて、子育てなんてできっこない、、、と今ではよく分かるのですが、その当時はそんなことすら分かっていませんでした。

しかしその後、準備万端で出産に向けて臨んできたつもりだったのに、臨月手前で切迫早産のため緊急搬送される羽目になってしました。本当にお産は甘く無い。最初から出ばなをくじかれたように感じました。そして同時に、自分の甘さをお腹の子どもにひたすら謝っていました。どうかお願いだから無事に生まれてきて欲しい!と祈り続けました。
結局、あれほど病院の世話にはなりたくないと思ってきた私でしたが、皮肉な事に近代医療に助けられることになりました。病院の最新の技術が無ければ、私の子どもは早産で生まれてしまい、下手をするとその後の成長にも影響を与えかねない状態でした。なのでこのときは、病院の先生や看護士さんたちに心から感謝しました。ここでの助けがなかったら、無事に息子は生まれていなかったかもしれないのですから。

幸い、その後病院の手厚い治療と見守りで無事に臨月を迎え、自宅に帰ることができました。そして無事に自宅で息子を出産することができました。このときのお産の体験は、まさにこの映画の中で妊婦さんたちが見せてくれるのと同じような、感動の体験でした。いや、感動という言葉では軽すぎるぐらい、人生感がガラッと変わってしまうような体験でした。

映画の中の妊婦さんのが、「お産の体験を何度も思い出します。いえ、何度でも思い出したいんです。」と話していますが、本当によく分かります。女性にとって、幸せなお産の体験は、まさに宝物のような体験だからです。そして、「いのち」というものには善も悪もなく、その存在そのものが圧倒的な価値を持っているという事を体全体で感じさせる瞬間だと思いました。

この玄牝という映画は、自然分娩万歳!という偏った映画と捉えられることが多いのですが、決してそうではありません。それは、映画の中の吉村先生の苦悩を見ていただくとよくわかると思います。この河瀬直美監督は、実に中立の立場で撮りきっていると思います。

これから子どもを産み育てようと思う若い人たち、そして子育ても過ぎ去って、人生の原点を見つめ直したい人に、いのちとは何かを問い直す意味で、是非とも観ていただきたい映画だと思います。



映画『玄牝 -げんぴん-』予告編





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